第6回北海道地域福祉学会優秀実践賞 授賞団体

 このたび第6回北海道地域福祉学会優秀実践賞の2団体が決定しましたのでお知らせします。本事業は、北海道内の地域福祉に関する優秀な実践を顕彰し、地域福祉にかかわる優れた実践を掘り起こすとともに、北海道の地域福祉の一層の発展と向上に寄与することを目的に実施するものです。
 以下に受賞団体の活動概要と推薦内容のまとめを紹介致します。次年度以降も多くの推薦が寄せられることを期待しています。

                     2024年2月29日
北海道地域福祉学会 会長

特定非営利活動法人ゆめみ~る

法人設立    2008年 
理事長     對馬 敬子 
住 所     北海道登別市幌別町5丁目18-1
ホームページ  https://yumemeal.net

1.受賞団体の実践概要

2008年「NPO法人ゆめみ~る」を開設。

1.主な実践活動として地域食堂、子育てサロン、ふれあい・いきいきサロン・配色事業、朝市(買物支援)である。なお、町内会代表者を中心とする理事10名、地域住民有志スタッフ30名、賛助会員100名で事業をスタートした。

2.平成23年度から子どもへの支援を拡充
 ・放課後児童クラブ開設(施設)
 ・放課後子ども教室の開催

3.令和元年から食活動の新たな展開
 ・主にかえる食堂(子ども食堂)、フードバンクゆめみーる、パンのパントリー、フードドライブ・食材SOS等を新たに展開

2.推薦内容

 推薦者は、「NPO法人 ゆめみ~る」の地域福祉活動を貴学会「地域福祉優秀実践賞」に推薦する。推薦理由は、以下のとおりである。
【先駆性】
 第1に、食支援を中心に既存の法制度の枠に留まらず、地域住民のニーズ(市民の声)を汲み取ることで多岐にわたる事業を展開している点である。なお、主要な活動は、地域食堂、配色事業、朝市(買い物支援)、サロン活動等である。第2に推薦団体は、食支援を中心に様々な企業や個人・団体、行政、社会福祉協議会等の参加・参画しており、当該地域における食支援を中心としたステークホルダーを構築している点である。第3に、2008年の設立以降、一貫して地域ニーズや社会変化に敏感に応じ、地域社会の要請にこたえている点である。例えば、平成23年以降子どもへの支援の拡充(放課後児童クラブ等の開設等)、令和元年からの子ども食堂「かえる食堂」やパンのパントリー事業、フードドライブ・食材SOS等である。これらのことから推薦団体は、既存の法制度・事業の枠組みにとらわれず、かつ、地域ニーズをくみ取り、地域の実情にあわせ食支援を中心とした諸実践がおこなわれていることからも先進的・先駆的な取り組みである評することができる。
【独創性】
 ひとつに、地域住民や市民の声を契機に地域の居場所として設立された点である。少子高齢化が進む登別市の現状を鑑み、地域課題を整理し、2005年の登別社会福祉協議会第1期登別市地域福祉実践計画「きずな」の策定の住民座談会を契機に2011年に設立され、食支援を中心に地域住民相互のつながりの場としても役割を担っている。もうひとつは、地域ニーズと社会的ニーズの双方を汲む実践であるという点である。登別市幌別鉄南地区は、人口減少が顕著にみられ高齢化が進行している(高齢化率41.6%)。同時に子育て世代の流出・減少から学校の廃統合の局面も迎えており、少子化も進展している。当地区は、登別市発症の地とも言われ、古くからの住民が多く住むものの、住民同士のつながりや協力関係は希薄であった。これらのニーズを汲み取り推薦団体は設立されており、その後も地域ニーズや個々のニーズにあわせた実践を展開している(例えば、配色事業では、食事内容等を一人ひとりすべてオーダーメイド化しており、個々の状況にあわせた食事を配色している。)。
【主体性】
 既に【先駆性】や【独創性】でも触れてきたが、推薦団体は、市民の声や地域ニーズに鑑み設立し、その後の事業展開においても主体的に取り組んでいると評することができる。主体的に取り組まれる活動は多いが、例をあげると。買い物支援である「朝市」は、地域住民の買い物困難に対して生まれた実践であり、私設の放課後児童クラブ等は、小学校のクラブ活動の減少から生じた取り組みである。これらのことからも主体性な地域実践活動が十分にみられる。
【発展性】
 第1に、既に述べてきたように。推薦団体の根幹である食支援(地域食堂、配色事業、買い物支援、サロン活動)は、持続的に継続的できる基盤を有し、今後の発展も期待できる。第2に地域ニーズに呼応し、平成23年以降、子どもや家庭の支援を拡充しており。令和元年からは子ども食堂やフードバンク等に発展しており、今後も発展を期待できる取り組みを展開している。第3に、特に、子どもの居場所や学習支援等の取り組みは目覚ましく「プログラミン夏休み教室」や「言葉の力アップ勉強会」、「ワクワク楽しい勉強会」等は多くの参加者をよんでいる。また、ひきこもり等の子どもの居場所としての場にもなっており、少子化が進む当該地域で子どもに対する支援の拠点へと発展する可能性を有している。
 これらのことから、推薦団体は、【発展性】も有していると評する。


ホクノー健康ステーション(株式会社ホクノー)

法人設立    2017年11月6日(1955年7月13日)
室 長     ヘルスケア・ウェルフェア 小熊 祐介(代表取締役社長 野地 秀一)
住 所     北海道札幌市厚別区もみじ台北7丁目1-2
ホームページ  https://www.hokuno.com

1.受賞団体の実践概要

「健康ステーション」(ホクノー)の実践概要は、以下のとおりである。

1.開設経緯

・2017年度経済産業省補助事業(健康寿命延伸産業創出推進事業)採択され、2017年11月6日に「健康ステーション」を開設。2018年まで継続採択。2019年4月よりホクノー自主事業に移行。

2.「健康ステーション」サービス

・ヘルスケア関連講座・教室  ・健康管理サービス  
・健康ポイントサービス    ・健康相談サービス
・地域包括ケアシステムに係るサービスの相談対応・情報発信
・認知症予防・早期発見プログラム
・アクティブシニアを活用した生活支援サービス
・シニア男性の利用促進
・スーパー・食堂との連携による食のリテラシー向上
・健康関連商品・サービスの紹介・検証
・医療機関と連携した予防医療や健康ステーションの利用促進
・介護施設等の要支援者・要介護者の健康ステーションの利用促進

3.運営スタッフ

 ・ホクノー(運営主体)1名  
 ・運営管理サポーター1名   ・保健師 1名
 ・有償シニア運営ボランティア 8名(1日2名程度参加)
  ※もみじ台・近隣地区の住民が運営に参加

4.健康ステーションの利用状況

 ・利用者は、もみじ台地区の住民が半数を占める
 ・ステーション利用者は1日約150名(2019年2月実績)

2.推薦内容

 推薦者は、「ホクノー健康ステーション」(株式会社ホクノー)の地域福祉活動を貴学会「地域福祉優秀実践賞」に推薦する。推薦理由は、以下のとおりである。
【先駆性】
 第1に、地域住民の日常生活圏域・生活動線上のスーパーマーケットに『健康ステーション』を整備し、地域住民の健康づくりに寄与する地域包括ケアシステムの仕組みを構築した点である。これによって地域住民の健康増進・健康行動の変容、人々のつながりの形成等の成果がみられた。第2に、「健康ステーション」の取り組みは、地域住民や企業、大学、行政等の多様なアクターとの連携によって運営されている点である。この点の成果は、「健康ステーション」が地域住民や多様な機関との連携によって運営実施している点にみることができる。第3に、地域包括ケアの取り組みと経済の相互の増進である。この点は、「健康ステーション」の設置によりスーパーの売上が増加という成果をもたらした。このように「健康ステーション」の先駆的な取り組みは、既に事業実施の成果をもってもみることができ、実績の伴う先駆性ということができる。
【独創性】
 第1に、「健康ステーション」の着想の背景には、ホクノースーパーが所在する地域課題に鑑みた取り組みであることである。札幌市厚別区もみじ台の地域課題は、人口減少に伴いながら高齢化と少子化が同時に進行している点である。特に人口減少と高齢化は深刻であり、独居高齢者の増加に伴うひきこもり、つながりの喪失、低所得問題等が生じていた。そしてもみじ台地区の地域的特質でもあるが、北海道最大の公営住宅がある(公営住宅を中心にその外延を囲むように戸建てエリアがひろがっている)。そこでは生活保護や年金受給者の世帯も多く、個々の努力では健康にまで配慮できない状況が散見されていた。そのためもみじ台の地域課題を解決すべく、地域住民の“健康”に着目し「健康ステーション」を核とした取り組みが構想されたのである。また近年では、札幌市内では、はじめて小学校が統廃合され、少子化である。「健康ステーション」は、学齢期にある児童生徒の居場所活動も行われ、多世代交流の場でもある(現在、コロナ禍の影響で児童生徒の学習支援等の居場所活動は休止されている)。
【主体性】
 運営主体であるホクノーのスタッフ、全体企画・運営支援するTOPPAN(元凸版印刷)と連携し、現在においても健康ステーションの日常的な運営・新たな取り組みを主体的に実施している。また、推薦団体は開設時の経済産業省補助事業(健康寿命延伸産業創出推進事業)により積極的に実証事業を実施し、2019年からホクノーの自主事業として主体的におこなわれている。
 また活動の主体的取り組みは、民が主導する地域包括ケアの先駆的事例として学術団体で評価されていた(北海道地域福祉学会全道研究大会シンポジウム『地域福祉実践における多様な連携・協働の現状』,2022年11月20日.)
【発展性】
 既に「健康ステーション」のサービスパッケージは他の自治体に大きな影響を与えていた。「健康ステーション」のサービスパッケージが他自治体に提供されている場合もあった(例えば、名寄市)。これらのことから「健康ステーション」の理念やコンセプト、サービスパッケージ、運営スキーム、ノウハウ等には、大きな【発展性】を有している。また現在、デジタル田園都市国家構想交付金(採択)の札幌市の取り組みにおいて鍵となる役割を「健康ステーション」は担っている(“つなぐ、つむぐ、つくる”共創型スマートシティ「新・さっぽろモデル」)。
 なお、「健康ステーション」開設以来、北星学園大学、北海道情報大学等の大学間との事業実施、交流も活発であり、例えば、北星学園大学『コミュニティワーク実習』への協力(特別講義・フィールドワーク実習等)、北海道情報大学の健康管理サービスへの学生たちの参画等もみられる。今後、北星学園大学松岡研究室で実施されている「健康ステーション」の事業実績の整理と地域福祉活動に関する調査研究も計画されている。
 これらのことから、これまでの事業実績のうえに、新たな展開が行われており、多様なアクターを参画し、事業を実施するスキームは今後も大きな【発展性】を有している。またこれまでみてきた【先駆性】【独創性】【主体性】【発展性】は、北海道内に留まらず、全国へ波及する可能性を有すると評する。