第1回北海道地域福祉学会優秀実践賞団体決定のお知らせ
このたび第1回北海道地域福祉学会優秀実践賞の団体が決定しましたのでお知らせします。本事業は、北海道内の地域福祉に関する優秀な実践を顕彰し、地域福祉にかかわる優れた実践を掘り起こすとともに、北海道の地域福祉の一層の発展と向上に寄与することを目的に実施するものです。
以下に受賞団体の活動概要と推薦内容のまとめを紹介致します。次年度以降も多くの推薦が寄せられることを期待しています。
2018年9月30日
北海道地域福祉学会 会長 梶 晴美
第1回北海道地域福祉学会優秀実践賞 受賞団体
社会福祉法人さつき会 (ホームページ)
法人設立1974年
理事長 木津 真庭 氏
住所 北海道上川郡鷹栖町9線4-5
法人常務理事 波潟幸敏 氏
1.受賞団体の実践概要
社会福祉法人さつき会は、ケースマネジメント(1989年)の導入、ユニットケア(2003年)および多機能型グループホーム「鷹栖なごみの家」(2004年)、地域密着型特別養護老人ホームおよび小規模多機能ホーム「ぬくもりの家えん」(2009年)を開設している。
2006年7 月に、15名の住民による「北野の介護を考える住民と事業所の勉強会」 がスタートし、現在、 「ぬくもり友の会」 として発展的な組織となり、サテライト型特別養護老人ホームと小規模多機能型居宅介護に併設された地域交流スペースを運営している。毎週火曜日に麻雀サロンや手芸サロン、「老いと介護」を学ぶ勉強会を開催している。夏庭の花壇づくりや菜園づくりも住民の会で行っている。中庭は、隣接の幼稚園児のマラソンコースとしても使用されており、園児と入居者や職員との交流の場となっている。6月下旬から10月までは、毎週土曜日、駐車場で朝市が開催されており、占有場所代として100円で誰でも出店できる。
また、社会福祉法人さつき会では地域包括ケアを推進するため、介護予防から看取りケアまで途切れ目のないサービス提供を図るため、施設・在宅ケア共通のケアプランの書式を統一して、2014年度から法人内の在宅・施設サービス全部門(8つの事業所)の相談員、ケアマネジャー、管理者、介護主任等、約15名を構成員とする「地域ケアマネジメント会議」を月1回実施している。
2.推薦内容
受賞団体では、地域密着型の特別養護老人ホーム「ぬくもりの家えん」にみる法人の理念と実践が、新たな地域福祉を担う社会福祉法人の柱となる①地域住民の参加、②介護人材養成、③介護職員の定着とキャリアパス、④在宅と施設をつなぎ、介護予防から看取りに至るシームレスケアの推進である。
①については、施設の建設計画段階から3年間、住民と施設側は勉強会を重ね、ニーズ調査、先進地視察、設計を行っており、完成後も住民参加を貫いている。当初15名の住民でスタートした活動は、現在63名の「ぬくもりの会」として拡大しており、施設内のボランティア活動をはじめとして、地域の農家や住民に施設の駐車場を開放した毎週土曜日の朝市やサロンの運営を実現している。着実な会の活動とメンバーの拡大を可能にしているのは運営上の戦略としてゆるやかな組織にして参加者の間に壁をつくらない工夫にある。
②については、旭川大学との連携を図り、地域の高校生を対象に7ヶ月をかけて介護職員初任者研修を実施している。この施設の実践が介護度を下げ、入院日数も少なくする介護の質向上の成果をもたらしていることを伝え、学習動機を高めている。
③については、利用者のQOL向上を重視する職員に対する職場の魅力を高めるための実践がキャリアパスの導入の実現である。離職率5%以下(最近4年間の新採用職員離職率は0%)の職員定着率の高さを生み出している。高校生への指導も職員の自信につながるプラス効果をもたらしている。
④については、法人として介護予防から看取りまでのシームレスなケアを推進しており、2017年5月に開設するサービス付き高齢者住宅(定員18名)では、理学療法士を2名に増員して、地域住民を対象とするフィットネス事業を計画している。
こうした背景には、鷹栖町が1979年から「自らの健康は自らで守る」ことを基礎とした「保健と福祉のまちづくり」を進めてきた歴史のなかで、保健師の重点配置を実現し、ケースマネジメント国際会議を鷹栖町で開催(1993年)する等の健康文化の形成と蓄積が社会福祉法人さつき会の基盤となっていることがあげられる。